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万国の労働者団結せよ!
発行者 現代社

東京都杉並区下高井戸1-34-9

革命的労働者協会
(社会党・社青同 解放派)

【解放 955号 (2010/4/15) 《投稿》 】【 以下、無断転載・無断作成 】


《 投 稿 》 もう一つの3.12

南田 好美



 組対法弾圧の被告である東署一三四号さんが、福岡拘置所の看守から意識を失うほどの殴る蹴るの暴行をうけたのは昨年の三月十二日。 彼は「死ぬかと思った」と同時に、「ここで死んでも負けではない」と、世界の労働者階級人民の階級闘争の前進へのゆるぎない確信をもって、 そのなかに自分の生−闘いと死をくっきりと位置づけ勝利感をかみしめることができたという。 逮捕時に続く二度目のテロにひるむことなく、彼はこの獄中テロの下手入を追及し謝罪を要求する闘いに果敢に決起する。 これを知った獄中の仲間たちは、つぎつぎに彼と結びつく獄中闘争に決起する。 点検拒否、ハンスト、シュプレヒコール、ミニ立て看板など、体調や状況をふまえ創意工夫したさまざまな闘いは、 やがて<十二日行動>として定例化され、「強制給食」や「保護房」、懲罰などの報復弾圧をものともせず闘いぬかれた。

 そして一年めの三月十二日獄中テロ一ヵ年弾劾の福岡拘置所をゆるがす一斉決起が闘いぬかれた。 女区から開始されたシュプレヒコールはつぎつぎにひきつがれあちこちで声があがり、それを封じこめようと看守が走り回り伸間をひきずり出す騒動で、 まるで蜂の巣をつついたような騒ぎになったという。この獄中決起と結びつき、福日労や獄中者組合通信委員会の仲間たちは福拘弾劾の情宣行動に決起した。 東京では組対法攻撃と闘う会の関東事務局の仲間たちを中心に、東京地裁前で、暴行や墨塗りの実態を暴露したパネルを並べての情宣行動が闘われた。 三・一二は組対法弾圧と闘うすべての仲間たちにとって忘れることのできない日として刻印された。

 三・一二が、遠く海を隔てた中米グアテマラの階級闘争においても決して忘れることのできない日であることをつい最近知った。 『エヴェラルドを捜して』(新潮文庫)を読んでである。 武装人民革命機構(ORPA)の若きゲリラ指揮官エヴェラルドが政府軍との銃撃戦のすえ行方不明となったのが一九九二年三月十二日なのだ。

 この本はエヴェラルドのつれあいである白人の米国人女性ジェニファー・K・ハーベリによる、エヴェラルドを捜しての四年間のすさまじい闘いの記録である。


 弁護士としてメキシコとの国境近くで働きながら市民権運動に関わっていた著者は、マヤ族難民から軍事政権による大量虐殺の実態を知る。 その政権に資金援助し、難民を強制送還してふたたび虐殺にさらす米政府に怒った著者はグアテマラに向かい、 軍の一掃作戦で行方不明になった学生や労組員を捜す女性たちのグループGAMと出会う。暗殺は彼女たちにもおよび、残虐な虐殺死体がつぎつぎにみつかる。 「全裸で汚物にまみれ、めった切りにされた上、強く殴られた跡もあった。顔の片側を恐らく斧か何かで一撃ざれたらしく、頭部がパクリと割れていた。しかし夢に見るほどわたしの脳裏から離れなかったのは、両の手だった。手首からすとんとのこぎりで切り取られ、近くの砂利の上にばらばらに置かれたもの言わぬ両手。胸部には血文字が残されていた。『他の者たちも覚悟しておけ』」。

 救援を開始した著者自身が身の危険を感じるほどのすさまじい弾圧・虐殺と、しかし闘いをやめない農民や労働者。 そして地下組織の存在とコンパニエロ(同志)たち。 彼女はグアテマラの現状を本で暴く決意を固め、その取材のためにORPAの女性闘士とのインタビューの許可を得て山のゲリラ基地へ入る。

 そこでゲリラ指揮官エヴェラルドと出会う。 結成当初からのメンバーで勇猛果敢な戦いぶりで軍事政権を悩ませつづけている闘士であり、 二人の恋人を政府軍に殺された痛みを背負いつづける物静かなマヤ族の青年。まったく異質な人生をたどってきた二人だが、急速にひかれあう。 再会のあてのない別れと、そして一年後メキシコでの思いがけない再会。二人は結婚し十ヵ月たらずの日々を共に過ごす。

 ふたたび山に戻って活動していたエヴェラルドが政府軍との銃撃戦ののち行方不明になったという報が届く。 殺されたのか、それとも生きたまま連れていかれたのか。それは想像するだに耐えがたい拷問を意味する。 政府軍は、「戦闘地域で死体を発見、エヴェラルドと断定」と発表する。 しかしグアテマラ民族革命連合(URNG)の創始者で指揮官、最高機密の一切を知り、 マヤ族奴隷蜂起の首謀者として軍が十七年間追いかけまわしてきた伝説的人物を簡単に殺すとは思われない。 ジェニファーは身も世もない悲しみと死よりも恐ろしい拷問の想像に苦しみながら、 真相をつきとめ彼を生きたままとりもどす限りなくゼロに近い可能性にかけ、壮絶な闘いを開始する。

 埋葬されたという共同裏地の身元不明死体の発掘の許可をとり掘り出すが、確認する直前に司法長官の妨害にあう。 グアテマラ、アメリカの政府機関と民間団体に「妻」であることを明かしてあらゆる法的手段をとり、思いつく限りの機会に真相究明を訴え、 情報を集める。政府軍の捕虜として二年間囚われからくも脱出してきたコンパニエロから、 基地内でベッドにしばりつけられ全身が腫れあがったエヴェラルドを目撃したという証言を得る。 再度死体発掘の許可をとり今度はマスコミの注目のなかで実現する。軍の発表した死体の特徴はエヴェラルドそのものなのに死体は別人。 隠ぺいのために一人の若者が殴り殺され埋められたのだ。 国防省にのりこみ国防相とわたりあいこの矛盾をつきつけ、九三年九月国防省正面の芝生で七日間のハンストに入る。 多くの友人やグアテマラの労働者、農民たちに守られながら闘いぬく。

 その後も国防省、アメリカ大使館、国連と世界をかけめぐって訴えつづけるが、エヴェラルドの行方も生死も明らかにならない。 三十年の内戦を終結させる和平協定締結の動き。しかしその過程でもつぎつぎに見つかる拷問の跡の明らかな虐殺死体。 何一つ解決されないままの「和平」はグアテマラ労働者・農民の解放闘争の圧殺とエヴェラルドの抹殺を意味する。 もはや時間はない。ジェニファーは無期限のハンストを決意する。 「十三年前、遠く離れたイギリスの牢で自分の信念を貫く証しとして餓死していったアイルランド人、ボビー・サンズに触発されて思いついた」 「エヴェラルドが現れるまで梃子でも動くものか。必要とあらば餓死する覚悟だ。 わたしが死にかけているのをみて、エヴェラルドがどこかで瀕死の状態でいることを思い起こしてくれる人がいるかもしれない」 「わたしの行動が真実を伝え、わたし自身が巨大な鏡となってエヴェラルドの苦しみを生々しく伝えることができれば、 誰かが彼の命を救えと行動を起こす可能性だってある。たとえ誰も立ちあがらなかったとしても、すくなくとも黙って引き下がりはしなかった証しにはなる」。

 医学資料や世界の政治犯たちのハンスト−餓死の記録を読み、一日でも長くハンストに耐えうる身体作りに励み、意識不明になった場合の委任状を準備し、 支援組織や世界の報道機関への連絡を手配し、九四年十月グアテマラ政庁舎正面の公園で無期限ハンストに突入した。 口にするのは「ペディアリート」という塩分と糖分の入った水のみ。頭がもうろうとし血糖値が下がり全身の機能が低下していく。 殺しの脅迫や妨害が強まる。 そのなかでも国防省や最高裁、大使館、市営墓地へと追及の手をゆるめず動き回る。 多くの友人やGAMの女性たち、マヤ族の農民たちが守るように彼女を取り囲み、テレビの取材が来る。 そのなかでエヴェラルドがまちがいなく生きて捕らえられたという情報が寄せられる。

 ハンストは三十日を超えた。残り時間は少ない。 自分が死んではエヴェラルドのために闘えない。衰弱すれば軍は強制入院させ、軍の手でハンストに屈辱的な終止符を打たれることになる。 まだ自由で闘う元気の残っているうちに新しい展開がみえるワシントンへ行こう。三十二日目の朝、ハンスト中止の声明文を読みあげる。 ワシントンへ行くがすぐ戻ってきて、数名の将校を誘拐、拷問、司法妨害のかどで、 国防相を証拠隠ぺいの罪でグアテマラ裁判所に告訴するつもりであるとつけ加える。

 ワシントンとグアテマラを何度も往復し究明を図るが、事態は依然として進まない。 ジェニファーは決然とハンスト再開の計画を練り始める。 九五年三月十二日、エヴェラルドが連行された三年目のこの日、ホワイトハウスの前庭で三回目のハンストにはいる。 前回の一ヵ月のハンストから四ヵ月、癒えてない身体は急速に壊れていく。そんな身体で連邦議会に何度も出向き支援を求める。 十一日目、一人の下院議員が政府筋からの確かな情報として彼女に告げる。エヴェラルドは九二年軍に捕らえられ殺された。 命令を下したのは米中央情報局(CIA)のスパイであるアルビレス大佐。生きてとりもどす可能性はついに断ちきられた。

 ワシントンもグアテマラも大混乱におちいり、その後膨大な資料が届き始め、断片的な情報をつなぎあわせ真相が明らかになってくる。 エヴェラルドは生きたまま捕まり、政府軍の基地で「アメとムチ」作戦にかけられたが完全黙秘を続け過酷な拷問にかけられた。 脱走を幾度も図ったが失敗した。いつどこでどうして殺されたかを確かめる情報はなかった。 しかし捕まったその週のうちに、CIAはホワイトハウスと国務省に彼の捕捉と虚偽の死亡発表の報告をしていた。 拷問と殺害に関わった下手人の将校たちはCIAのスパイだった。

 九六年三月、ジェニファーはジュネーブの国連人権委員会にふたたびのりこみ、グアテマラ軍を誘拐、拷間殺人、司法妨害で、 米国を残虐な拷問で得た情報をグアテマラ当局から買い、重大な犯罪行為の黙認、教唆、ジュネーブ協定違反として告発した。 CIAや国務省、国家安全保障、会議に対しても訴訟を起こした。

 ジェニファーは、悲しみを怒りに変えなおも闘いっづける。

 「あなたを殺した連中をとことん追いつめて、監獄にぶちこんでやる。あいつらが死んだら墓を踏みつけてやる。 あなたの遺体はいつかきっと見つけだし、緑豊かな静かな場所にあつく埋葬しましょう。あなたに関する一切の真相も突きとめるつもりよ。 わたしは頑張り続けます。するべきことがまだまだ残っているのですもの」「いまわたしの心の中で赤々と輝く火は、まぎれもなく炎と燃えるあなたの決意。 もう消すことも避けることもできない。あなたはヒロシマの被爆者と同じね。 原爆が投下されたとき、ちょうど立っていた大理石の階段の上に、強烈な原子の光線で永久にその影を焼きつけられたあの被爆者。 あなたもわたしの魂に永遠に消えない刻印を押してしまったのです。エヴェラルド、だからわたしは生きていくことにします」。

 米帝足下の人権活動家ジェファニーが. <エヴェラルドを探して>自らの命を賭して暴きだした敵は、ゲアテマラ政府・軍隊であり、 これを規定する米帝・CIAであった。ジェファニーの闘いは、われわれ−全世界労働者人民によびかける。エヴェラルドの闘いをひきつごう。 グアテマラ階級闘争の炎を燃やしつづけよう。

 三・一二獄中テロとこれを許さない獄中決起は、遠く海を隔て時間を超えて、グアテマラのもう一つの三・一二に、 無数の三・一二に連なり結びついていることを胸に刻もう。


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