万国の労働者団結せよ!
発行者 現代社

東京都杉並区下高井戸1-34-9

革命的労働者協会
(社会党・社青同 解放派)

【解放 1020号 (2013/1/1) 《年頭論文》 】【 以下、無断転載・無断作成 】



はじめに
第1章 世界恐慌の深まりと反革命戦争の突撃
第2章 総翼賛化とファシズム的改編攻撃
第3章 2012年の闘いの地平と飛躍の課題 革労協の自己批判
第4章 朝鮮反革命戦争と対決しファシズム粉砕−プロレタリア権力闘争の飛躍へ
第5章 2013年の闘いの方針
第6章 恐慌−戦争・ファシズムと対決し、総「非正規」化・賃下げ攻撃を粉砕しよう
第7章 共産主義的労働者党建設、プロレタリア統一戦線−闘う共同戦線の建設、プロレタリア解放−全人民解放へ
第8章 同志中原虐殺報復−反革命革マルを解体・絶滅せよ
第9章 五同志虐殺報復−木元グループを解体・根絶せよ



第1章 世界恐慌の深まりと反革命戦争の突撃

深まる世界恐慌

 世界恐慌の深まり

 現在の世界恐慌の現状は二〇〇八年の「リーマン・ショック」爆発当時よりも危機性格を強めている。それは帝国主義国だけでなく「新興国」をふくめた生産と貿易の停滞・縮小、膨大な労働者への失業の強制が、金融機構の動揺を背景に深化しているからである。ブルジョアジーは恐慌がもたらす危機・矛盾を労働者・人民におしつけることに全力をあげている。

 資本の延命のための金融緩和と財政危機突破のための緊縮策もまた労働者人民の窮乏と同時に資本制生産を縮小させ危機をより深刻化させている。ブルジョアジーは労働者人民に対する極限的な搾取・収奪の強化に突撃し、その階級的反乱が全世界で拡大している。帝国主義ブルジョアジー−全世界支配階級は、足下からの労働者・人民の実力決起に恐怖しながら反革命戦争と治安弾圧の強化に延命を託し、そのもとでファシズムが台頭している。とりわけ米帝はイラク、アフガニスタンでの敗勢にあえぎながら、アジア・太平洋−中東を貫いた反革命戦争体制を必死で維持・強化しようとしている。さらに「後進」資本主義諸国、旧スターリン主義諸国においては、帝国主義資本による搾取と収奪が極限化し、また帝国主義が植民地支配のために生み出した部族間分断と差別を背景とした内戦と殺害、餓死が拡大している。戦争での虐殺と窮乏・飢餓が全世界の労働者・人民に襲いかかっている。

 ブルジョアジーは、最終的には戦争とファシズムヘの突撃を核心とする階級闘争圧殺攻撃をとおして、この危機を突破するしかない。ファシストが各国で議会進出をはかっている。世界恐慌の時代とは、経済的危機の政治的危機への転化を加速させ、労働者人民にとっては階級闘争の前進だけが唯一の展望である時代である。

 米帝の「財政の崖」

 米財政赤字は恐慌以降毎年対国内総生産(GDP)比一〇%に相当する一兆ドルを超え、累積債務がGDPと同規模にまで膨らんでいる。「財政の崖」とは、累積債務が債務上限法で定められた上限に達し、財政統制法にもとづく自動的歳出削減が発動されることであり、新規国債発行が停止され、予算の執行や国債利払いの不能といった事態に発展する。一一年夏にはこれが米国債格下げ論議に発展して、米議会はかろうじて妥協を成立させた。

 財政赤字の背景には、根底に資本の絶対的過剰を背景にした実物経済の停滞が横たわり、そのうえに恐慌下の資本救済のための財政支出と「対テロ戦争」による軍事支出の膨張がある。そのどれもが「解決」の展望がないのだから、今回もまたどんな妥協が果たされようとも崖っぷちの綱渡りが続くしかない。

 こうして財政出動の余地をなくしつつある米帝は金融政策に依存しようとしている。しかし、金融政策は需要をつくり出すわけではなく、金利に働きかける以上の意味を持たない。実際、米帝の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)の議長バーナンキは議会証言で「量的緩和」について「経済を刺激するために金利を引き下げるという基本的な論理は同じ」だと言明している。

 問題は、ひとつに、この金融緩和を名目とした国債買い入れが政府の財政赤字の中央銀行による補てんの性格を強めていることであり、ふたつに、それが各銀行間の「緩和競争」に連動していること、みっつに、緩和競争が「為替切り下げ競争」に発展し、「近隣窮乏化政策」として展開されていることである。よっつに、この緩和競争が「新興国」・資源国に波及し、資源商品をはじめとするインフレをもたらし、その世界的波及を不可避としていることである。

 これらはドル暴落−基軸通貨からの転落をはらみつつハイパーインフレをひき寄せるしかないものである。

 金融緩和で景気を下支えしつつ、その間に製造業の復活と輸出拡大で米帝経済を再生きせることをかかげたオバマ政権のデマは破綻している。実際は、金融緩和で資産価格上昇を促し、「バブル」的経済拡大を図るという政策が追求されている。それは決して成功しない。なぜなら、世界恐慌に先行する経済拡大は、米帝が膨大な赤字を出しつづけ(世界の赤字の九割)、米帝以外の国が一方的に黒字を積みあげ、積みあげたカネを米帝の金融資産に投資したことの結果であり、持続不可能なその前提が破綻したのが世界恐慌だからだ。

 欧州危機の現段階

 十月、東京で国際通貨基金(IMF)・世界銀行総会およびG7財務相・中央銀行総裁会議が開催されち恐慌下で国家財政と金融機確実物経済のすべてが危機的事態にある世界経済、その建て直しの演出の機会であったにもかかわらず、マスコミは「日米欧、危機克服の道示せず」と書きたてた。

 危機の所在は、はっきりしている。

 ひとつは、「先進国」経済が資本過剰のもとで生産と貿易が停滞し、政府財政危機にまでいたったことである。政府が資本延命のために発行した国債を金融機関が抱えこみ、財政不安が生じると国債価格が下落して金融機関の損失が膨らむ。金融機関は損失の拡大を抑えるためにも、利潤率の低落にあえぐ産業資本には資金を回さない。その「解決」のために金融緩和や金融機関への資本注入がおこなわれ、政府財政がいちだんと悪化するという悪循環である。

 ふたつに、先進国の危機が「新興国」経済に波及し、それがまた「先進国」にはね返るという負の連鎖が進み、危機が世界的なものへといっそう拡大していることである。債務問題は経済構造のぜい弱な南欧諸国で火を噴き、欧州債務危機に発展した。その欧州危機を受けて中国インドなど「新興国」で経済減速を加速させている。

 ギリシャを発火点とする南欧危機は、もともとユーロ導入以降の北部欧州の南欧への資本進出がそこでの賃金や物価を上昇させるとともに、それを受けてより低賃金を求める資本が東欧へと資本移転を加速させたことが背景にある。南欧諸国が資本ひき揚げの穴埋めのための借金(国債増発)や不動産など資産価格上昇を金融的に支えながら矛盾を先延ばししてきたことが、恐慌のただなかで全欧州−世界をまきこむかたちで矛盾を爆発させたのである。

 いま、南欧諸国で進められている緊縮策は生産と信用をとことん収縮させる。一方、危機がつくり出したユーロ為替相場は、北部欧州とくにドイツの域外への競争力を確保するものとなってきた。ドイツの資本にとって現在の危機は労働者人民への矛盾おしつけが可能な限り容認しうるものなのである。それはドイツ国内で「新中道主義」の名のもとで進められた生産性向上の大合理化を、全欧州の支配階級に普及させる意図をももってつき出されている。

 欧州を中心として緊縮財政策−矛盾を労働者人民にしわ寄せし、搾取−収奪の極限化をとおしてすべての資金を資本の延命のために動員・投入するという政策−が展開されている。それは恐慌の危機の政治的危機への転化を促進している。

 「新興国」経済

 インドやブラジルなど「新興国」経済の停滞感がいちだんと広がっている、インドやブラジルの一二年の経済成長は微増にとどまった。中国は生産や消費拡大にブレーキがかかり、欧州とつながりの深いロシアや南アフリカも輸出がふるわない。「先進国」の景況に「新興国」が足をすくわれる負の連鎖が鮮明になってきた。

 「世界の工場・市場」と呼ばれる中国経済が矛盾を露呈させている。恐慌の波及、とくに欧州危機をうけた経済減速を背景として、労働者人民の窮乏が広がりつつあることがあらためて鮮明となっている。中国の西南財経大の嗣査によれば、一二年七月の失業率は八・〇五%に高まり、農民工(その六八%が出稼ぎ農民工である)の失業率も六%まで上昇したとされている。

 同時に、社会における所得配分の不平等さをはかる指標とされる「ジニ係数」(まったく格差のない状態が0で、最大で1となる)、は、一〇年には社会不安をひきおこす危機ラインとされる0.6を突破した。

 インド経済はスタグフレーションヘの転落が視野にはいってきた。成長率でいえば五%程度で、個人消費が落ち込み固定資本投資の横ばいを背景に内需の成長率は二%にとどまる。これは人口増加とインフレを考えればゼロ成長である。一方で、インフレ率は七%台なかばで、さらに上昇をうかがう勢いだ。

 ロシアは、九月までのインフレ率が六%超、通気では七%超という見通しであり、減速する経済をまえにしながらインフレ抑制のために利上げを余儀なくされた。

 ベトナムやエジプトなど「ネクスト・イレブン」と喧伝された諸国はさらに厳しいスタグフレーション状態に見舞われている。

 総じて、帝国主義諸国の資本・分業構造と消費に支えられた「新興国経匪という構造そのものが根底的に動揺しているのである。

 WTO貿易交渉の破綻

 この大恐慌に対して、資本は政策的な解決ができない。直後の膨大な国費投入によってすべての国が財政危機に陥っている。そして米帝財政危機の結果としてドルが暴落の渕にある。国際貿易の決済の中心である基軸通貨=ドルが不安定になれば、世界貿易はさらに縮小し恐慌は深く長期にわたることになる。また世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハラウンド)は妥結の展望がない。自由貿易協定(FTA)が主軸になって「二国間」あるいは「ブロック」的な傾向を強めている。そのまま帝国主義ごとのブロック形成にいたるものではないが、域内では国際的に展開できる大資本しか延命できない構造がますます強まっている。

 労働者階級の現状

 世界恐慌の最大の結果が、大失業である。一時的なものではない、就労の見込みがないまま住居を失い飢餓をもたらす失業である。家計が破綻する低賃金と劣悪な労働条件や、「非正規」化の拡大で通告のみでの解雇がそのまま住居を奪うという事態が一般化している。

 国際労働機関(ILO)の統計発表によれば、現在、世界で一九二九年大恐慌時に匹敵する二億人が失業しており、そのうち四割が青年である。

 二〇二一年暮れの記者会見で欧州中央銀行(ECB)総裁ドラギは、一三年のユーロ圏の経済がマイナス成長になること、最悪水準を更新中の失業率は今後さらに悪化するという見通しを明らかにせざるをえなかった。

 米帝経済の改善を示すと喧伝されている雇用回復の実態はどうか。

 失業率が七%台後半で高止まりしているのはもとより、この数字そのものに欺まんがある。すなわち「労働参加率の低下であり、長期失業に耐えきれず求職活動をあきらめ半失業で生き延びている人々の増大を反映していない。また、増加を支えているのは実際には、人材派遣やウオルマートなどに典型的な低賃金のサービス産業の増加である。それどころか、「回復」宣伝とは裏腹に製造業の合理化は止まっていない。そこでは工場閉鎖や一時解雇(レイオフ)などの従来からの合理化手法に加え、新たに採用する労働者をすでに雇用されている労働者とは別の体系=二重賃金制で雇用する。労働者の負担を原則とする確定拠出年金や社会保険なども切り下げた水準を強制するという攻撃が拡大しているということである。

 それは破産法第一一条を利用して労組を屈服させた自動車資本ゼネラルモーターズ(GM)はもとより、米産業資本の「勝ち組」とされるゼネラルエレクトリック(GE)やキャタピラー社でも進められている。GEのケンタッキー工場では、生産ラインを海外から戻し雇用を増加させはした。しかし、そこで新採用された労働者は、先任労働者よりも時給で十〜十五ドルも安く、賃金が先任労働者に追いつくことはないという約束で雇われるのである。キャタピラー社では労働者たちがストライキに決起したが、資本の攻撃による一部組合員のスト離脱のもとで単位工場組合レベルでは全面的な屈服を強いられた。ここには、資本が利潤を上げられる限りで労働者を雇う、ということが鮮明に示されている。

 とりわけ帝国主義共通の事態として製造業の縮小が著しく、この十年間で製造業の労働者は六百万人減少した。さらに、黒人差別ヒスパニック差別が雇用に貫かれ、白人の失業率七・〇%に対して黒人は一三・四%と二倍近い。

 ヨーロッパのユーロ圏の十七カ国の失業率は一一・六%であり、とりわけスペイン二五・八%、ギリシャ二五・一%、二十五歳未満を取り出せばスペイン五四・二%、ギリシャ五五・六%という、すさまじい数字である。無産の青年は実質的に就職できない状態にたたきこまれている。

 日帝も同様である。統計操作で日帝の失業率は欧米の半分の数値しか出ないと言われているが、それでも十月時点で四・二%、二十五歳未満では八・二%となっている。日帝の有効求人倍率は〇九年以降、最底となった〇・四前後から上昇しっづけてきた。しかしこれは、低賃金と劣悪な労働条件の「非正規」労働の求人増によるものである。そしてこの有効求人倍率も今秋には下落に転じた。製造業の縮小は歯止めがかからず、製造業の労働者はピークの一九九二年年の千五百万人から減少レつづけ、二〇二年には九百八十万人にまで減少した。

 さらに恐慌突入以来、ドイツを除くすべての「先進国」でパートタイム労働が増加し、日本とは事情が異なる面があるにせよカナダやオランダでは若者の二人に一人はパートタイム労働者である。日帝足下で青年労働者の「非正規」率が五割に達しようとしている現実は根本的には世界的なものである。

 一九二九元年以降の世界恐慌では、米帝の失業率が二五%にのぼったと伝えられている。現在は八十年前とは比較にならないほど分業が深化し労働者の分断は深まり、「非正規」化など劣悪な労働条件が強制され、解雇が通告されると同時に住居を失うという状況が労働者に強制されている。二九年恐慌当事に比すべき事態がいま進行している。

帝国主義の反革命戦争への突撃

 米軍事戦略の歴史的敗北と再編

 恐慌の画段階的激化に比肩して、中東、朝鮮半島をはじめとした大規模な反革命戦争勃発の危機が急速に煮つまりつつある。それがまた恐慌の激化に大きな影響をもたらしている。米帝の軍事戦略の転換は、世界史的転換の時代を象徴している。

 世界の労働者階級人民の闘いは、「第二次大戦唯一の無傷の戦勝国」であるがゆえに「世界の憲兵」として、衰退しっつも曲がりなりにも展開しえていた米帝の「二正面戦略」をついに破産に追いこんだ。昨年一月米帝オバマは、第二次大戦後以来の世界的軍事戦略の再編を余儀なくされ、「二十一世紀の国防の優先課題」を発表した。財政難による国防費削減により、二つの大規模な地域紛争に同時に対処する「二正面戦略」に必要な戦力がもはや維持できないことを表明したのである。

 「九・一一米同時多発テロ」をきっかけにした「二つの戦争」で軍事費は過去十年間で倍増し、年間で七千億ドル(約五十四兆円)規模にふくらんでいた。ここを基軸国であるがゆえに可能であった野放図なドルのバラまきをも大きな要因とした恐慌の爆発が、「リーマン・ショック」として米帝自身を直撃したのである。

 このためかつてのベトナムや現在のイラク、アフガンに対するような「地域の大規模で長期的な軍事作戦」を「前提としない」態勢をとらざるをえなくなった。多国間体制の枠組みを拡大することで米軍負担を大幅軽減し、他方で唯一ともいえる残存スターリン主義国である「中国の軍事的脅威に対抗するため」と、アジア戦力は増強することになった。また「大規模な紛争への対処と別の地域での『抑止』への取り組み」を前提とし、「対テロなどの非正規戦」「効率的で安定した核戦力維持」「米本土の防衛」を基本とするものへと転換を余儀なくされた。

 「中国の軍事的脅威に対抗するため」「対テロなどの非正規戦」とは階級闘争の疎外された転化形態である体制間戦争やブルジョア国家間の戦争に対するより、その本質的矛盾としてある階級戦争、すなわち、むきだしの反革命戦争によりいっそう身構えたこと−階級闘争撲滅を先制的に強化する軍事体制構築に本格的にふみこむことを意味している。

 パレスチナ人民の武装闘争と、米帝、イスラエル・シオニストによる中東反革命戦争の激化

 中東反革命戦争の危機が激化している。

 昨年十一月、イスラエル軍はパレスチナ・ガザヘの傾撃を激化させ、十四日にはハマス軍事部門指導者アワメド・ジャバリを殺害した。ごの攻撃で二十二日の停戦合意までパレスチナ人民百六十人を虐殺し数千人を負傷させた。この多くは民間人であり、子供たちである。停戦合意後もイスラエル軍によるパレスチナ人民への攻撃が続いている。

 イスラエル国内で反戦闘争と階級的な実力闘争が激化している。

 右派「リクード」と極右「イスラエル我が家」の連立政権は昨年五月、中道「カディマ」と大連立政権を発足させた。九月にも予定されていた総選挙はいったん延期されたが、本年一月におこなわれる。イスラエルの大連立政権は、失業とインフレ(・住宅難)そして重税に苦しむイスラエルの労働者人民を、対パレスチナの戦争に排外主義的に動員するためにガザに侵攻している。

 パレスチナ労働者人民はイスラエルの軍事侵攻に果敢に武装抵抗闘争を組織し闘いぬいている。イスラエルの監獄にはいまだ一万二千人のパレスチナ人が投獄され、拷問され虐待されている。一六百人ものパレスチナ人獄中者は、最大七十日にもおよぶ命がけのハンストを聞い、この五月に獄殺処遇の緩和措置を実現させている。パレスチナ人獄中者は、イスラエルのガザ侵攻に反対する不屈の獄中闘争をいまイスラエルの監獄で闘いぬいているだろう。

 イスラエルはパレスチナ・ガザに侵攻する一方で、イランに対する本格的な戦争行動を準備している。二年にべルシャ湾ではじまった米英日の三カ国合同軍事演習は、この九月に三十カ国以上の軍隊が参加する「国際掃海演習」として過去最大規模でおこなわれた。日帝はこの演習に掃海母艦「うらが」など二隻を参加させた。さらに十月二十一日からは米軍とイスラエル軍による大規模な合同軍事演習が、一カ月の予定でおこなわれている。米軍はペルシャ湾に空母二隻を配備し、イランに対して軍事挑発行動をしかけている。

 七月、全面的に発動された対イラン経済封鎖は、イラン労働者人民に高率インフレと食料・燃料不足、工場閉鎖・操業短縮による失業を強い、生きがたい苦痛をもたらしている。

 イスラエル首相ネタニヤフは九月二十七日、国連で演説し、「一三年春にはイランに対する軍事攻撃にふみ切る」と宣言した。ペルシャ湾で米軍を主力とする合同軍演習を積み重ねてきたイスラエルは、今回のガザ侵攻でハマスを徹底的にたたきつぶし、排外主義的な戦争扇動を組織し一月総選挙で大連立政権を勝利させることをとおして、春にも米軍と共同で対イラン軍事攻撃にふみ切ろうとしている。

 中東・北アフリカ地域最大の親米政権=ムバラク政権が崩壊した。孤立を深めるイスラエルは対パレスチナ、対イランの戦争政策を加速させ、排外主義的にイスラエル国内のプロレタリア的反乱を解体しようとしている。またイランの宗教的反革命政権は、核武装と対イスラエル戦争政策を進めることで、国内の高まるプロレタリア的な怒りと反乱を排外的に解体しようとしている。米帝オバマはイスラエルとともにこの戦争プロセスを加速させ、中東・北アフリカ地域全体の反プロレタリア的な米帝文配を再確立させようと追求している。米帝・イスラエルの反革命階級同盟を解体し、中東の労働者人民相互の殺りく戦=中東反革命戦争突撃を粉砕しなければならない。

 イスラエルのパレスチナ侵攻を許すな。イスラエル・米帝の対イラン−中東反革命戦争粉砕。日帝の中東反革命戦争突撃−対イラン軍事行動参戦を阻止しよう。

 「アラブの春」以降の中東反革命戦争の激化は、とりわけアラブ王制諸国階級闘争の激化とシリア内戦にいたっている。カダフィの最後を見たアサドは徹底抗戦し、他のアラブ諸国家をまきこむことで延命を策している。これがトルコの空軍機を「領空侵犯」したとして撃墜する事態(六月二十二日)ともなり、中東一帯における国家間戦争や内戦民族解放闘争・各国階級闘争のさらなる拡大・激化となりかねない事態となっている。これをおそれた米帝やロシアなどは、十二月六日ダブリンで「秘密会談」をもち、シリア内戦の「落とし所」を本格的に探りだした。

 北アフリカから中近東一体で、もはや米帝は「二正面作戦」をとれない。そのなかでアフガンでの敗退は決定的である。イスラエルによるイラン核施設への爆撃の可能性は急激に高まっており、それは大規模な国際反革命戦争の引き金になる。しかし米帝がそれに対処する軍事力はないため、イスラエルには制動をかけるしかない。したがってまた、これら地域での階級闘争の激発・高揚は不可避で歴史的趨勢である。

 朝鮮反革命戦争全面勃発の危機

 朝鮮半島は一〇年三月の韓国哨戒艦沈没事件や十一月の延坪島砲撃事件をもって段階を画した。そのさなか昨年十二月十二日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の「人工衛星」が打ち上げられた。米帝は、衛星が「軌道にのった」と発表した。朝鮮反革命戦争の危機は全面勃発としての危機に突入しつつある。

 日米韓の反革命戦争への突撃衝動・挑発は、昨年の以下の例だけでもすさまじいものである。

 十一月五日〜十六日には、計四万七千名余が参加レた日米共同統合実動演習「キーンソード2013」がおこなわれた。演習の最大の目的は、中国のA2AD(接近阻止・領域拒否)戦略にいかに対抗するかというものであった。同様の戦略を保持している国がイランであるが、そのために米帝は空軍力と海軍力を効果的に運用するエアシーバトルを構想している。中国やイランなどで不測の事態が起きた際、最初に情報・監視・偵察(ISR)機能を叩くことがこの柱に据えられている。

 三月に韓国政府は北朝鮮全域が攻撃可能な巡航ミサイル『玄武3C』と、攻撃力を強化した新型弾道ミサイルをすでに実戦配置していることを明らかにしている。北朝鮮と比べるとミサイル保有ではすでに圧倒的に優位だが、そのうえで米帝から真空爆弾(=燃料気化爆弾)百五十発を購入した。これは爆発時に周辺一帯の空気を一気に取り入れて爆発するので爆発規模が非常に大きく、多数の人間を一瞬に殺傷できる。一発でサッカー競技場数十個にわたる広い面積に打撃を与えることができるという。北朝鮮の政・軍中枢を瞬時にせん滅する速戦即決戦略体制を整えている。八月二十日より三十一日まで、米韓合同軍事演習(実戦演習)「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」が米軍三万人、韓国軍五万六千人を動員しておこなわれた。これに対して北朝鮮金正恩は「敵がわれわれの領土に一つの火花でも落とせば祖国統一のための聖戦につなげよ」と述べた。

 米海兵隊のような強襲突撃隊的任務をもつ日帝の西部方面普通科連隊(長崎県・相浦駐屯地)は、昨年九月上旬に米海兵隊とマリアナ諸島水域で水陸両用の合同演習をおこなった。陸自のこうした合同訓練ははじめてであった。オスプレイはこのような強襲上陸作戦に投入するためのものである。十月十二日にオスプレイの普天間基地配備を強行したのは、十月下旬に沖縄でも同様の合同訓練をおこなうためであった。だがこの訓練は、沖縄労働者人民の怒りによって「断念」させられた。

 米韓下院の軍事委員会は、韓国におけるくむ『2013国防授権法修正案』を可決した。一九五八年から韓国駐留アメリカ軍が戦術核兵器数百基を配備していたが、九一年十二月に南北が共同で採択した『韓半島非核化宣言』のあと、すべて撤去されていたものだ。

 日米韓の合同演習はほとんど切れ目なくおこなわれている。これらは演習ではなく実戦行動である。戦端が切りひらかれるや、その部隊がただちに対応・転戦できるように常時動かしているのであり、この意味ですでに始まっているといってもいい。

全世界労働者・人民の決起

 南朝鮮階級闘争は、十二月十九日の韓国大統領選を経て新たな段階に突入した。大統領に与党セヌリ党の朴槿恵(バククネ)が選出された。朴は南北会談に意欲を示していくと語っている。しかし、北朝鮮の人工衛星打ち上げに対しては「国連決議に違反する世界に対する挑戦」と非難し、李明博(イミョンバク)の戦争政策を継承していくことを示した。朴は李の独島訪問でギクシャクした韓日関係を調整しながら韓米日反革命階級同盟を強化してくるだろう。それは南朝鮮階級闘争の鎮圧攻撃として激化する。

 大統領選で与野党とも認めたように、李明博の五年間で「非正規職」労働者が増大し、「格挙が拡大した。そのなかで弾圧と対決し労働運動が不屈に闘われている。現代自動車の「非正規職」労働者の職場制圧の闘い、大弾圧と対決しながら解雇撤回の実力行動を闘う双龍(サンヨン)自動車の労働者の闘いなど労働争議が頑強に闘われている。

 昨年十一月、中国共産党大会が開催され、胡錦濤体制から習近平体制に交替した。一大会では、胡錦濤を主軸とした共産青年同盟派と習近平らの太子党そして軍産複合体として力をつけた軍部などの激しい権力抗争がくり広げられた。これ自身は中国スターリン主義の統治力の後退とそしてケ小平以来の資本主義を導入した改革・開放路線の破たんを示すものだ。

 中国の社会矛盾は激化する一方である、中国共産党大会で主要な課題として論議されたように階層間格差、地域間格差、産業間格差、民族間格差など深刻な貧富の格差が拡大し環境破壊が激化し、労働争議、農民争議、住民運動が爆発している。公式でも五百万人〜六百万人がこれら争議に参加していると発表されているが、実数はその何倍にもなるだろう。そのなかでスターリニスト・官僚の腐敗の横行で争議に対応できず、全国で暴動決起となっている。このなかで中国共産党は「中華民族の偉大なる復興」「海洋強国論」をかかげ、軍備増強にひた走っている。

 日帝が延命をかけて進出したアジア諸国の工場で、インドのスズキ自動車子会社「マルチ・スズキ」の工場をはじめ、ベトナムのキヤノン、インドネシアの工業団地、中国のシチズン時計など、ストライキや生産ラインの破壊が激発している。さらに中国江蘇省南通市にある王子製紙の工場から出る有毒廃水に対して、万余の人民が実力決起し排水作業を停止させた。

 中東・北アフリカでの新たな決起が開始され、米帝に対する怒りが噴出している。エジプトでは、イスラム同胞団出身のモルシが大統領に就任した。モルシの大統領権限集中の強権発動に対して、労働者人民が軍・警察と対峠して闘いぬいている。

 ギリシャ、スペインの労働者・人民は、権力・資本による「国家財政破綻」のどう喝にも屈せず、不屈のゼネストと街頭実力闘争に決起している。イタリアでは、十一月に就職難を訴える学生や労働組合が、反緊縮デモや集会をくり返し、警察当局と衝突、こうしたなかで労働者人民の生きるための闘い、階級的決起が拡大している。○九年から開始された欧州労組の国際連帯闘争は、一一年秋ギリシャ、ポルトガルのゼネストを先頭に二十ヵ国の統一行動として闘われ、一二年秋の全欧州同時ストライキに発展している。同時に、スペインの五月十九日運動などの戦闘的決起、炭鉱労働者の武装ゲリラ戦などがその闘いを階級的に牽引している。

 インドのマルチ・スズキの労働者決起、南アの鉱山労働者の闘いはそれらの反映であるとともに、闘いの方向性を示してもいる。

 とくに、南アの御用労組を食い破って組織された労働者たちの解決金と賃上げの獲得は、しかし、数十名の労働者が虐殺されるという流血と二百七十名もの殺人罪起訴(発砲事件を労働者の責任にしてでっちあげた)のうえでのことであり、闘いはいまだ途上である。

 いまの世界恐慌がこうした闘いを世界中で無数に生み出していること、われわれはここを見据え、日帝足下の聞いの課題を明らかにしていこう。

 ヨーロッパでも右翼ファシストの反革命テロや弾圧に抗して、労働者人民の本格的な武装闘争がいよいよ台頭・再開しだしている。

 ギリシャではゼネストの波のなかで、官庁などに対する爆弾攻撃がはじまっている。スペインでも炭鉱労働者の警官隊との手製ロケット砲をふくんだ武装攻防が闘いぬかれている。アイルランドではアイルランド共和軍(IRA)暫定派の停戦合意に反対する三グループが昨年七月に統合し新たなIRAが結成されたが、このグループが重警備監獄マガベリー刑務所で命がけのハンスト闘争などを決行しているIRA戦士を弾圧する刑務官を十一月一日に射殺した。

 恐慌の深まりのなかで戦争とファシズムの危機が激化している。このなかで全世界労働者人民のストライキ、実力闘争・武装闘争が頑強に闘われている。共通の敵=帝国主義ブルジョアジーの打倒にむけた闘いに連帯し、合流する闘いを全力でなしとげていこう。



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